ふり向けば加藤さん

わたモテ感想&考察

【感想】喪149:モテないし先輩になる

喪132のタイトルが「モテないし先輩後輩の関係」で「私にとって初めての後輩」とまで言ってたのに、今更「先輩になる」とはどういう謎掛けでしょうか。「先輩」という言葉に込められた意味合いが違うんでしょうかね。「(今江)先輩になる」という素敵な解釈をなさった方もおられました。私は今回の話はもこっちが「先輩になる」という長いテーマの第一歩だと思っています。理由はどこかで述べると思いますが、まずは順に感想を述べていきます。

 


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ここに至るまで①後ろ髪を撫でる②前髪をいじる③リップを塗る④笑顔⑤再びリップ、という長い過程を経ているので、雫の「ちゃんとしないと」という発言はそのままのニュアンスでは受け取れない。雫のキャラからすると、まず家を出る段階でバッチリ化粧はしてる筈。それにもかかわらず、④の段階で一旦出来栄えに満足した様子を見せながら更に重点的に唇を彩るのはどういうつもりなのか。あわよくば勝ちに来てるとしか思えない。④で頬を紅潮させてる時も絶対もこっちのこと考えてるし…。

もこっちもよくまあ飽きもせず眺めてたな。もこっちの観察癖は今にはじまったことじゃないし、おそらく無心で見てただけなんやろうけど、やってることは完全に彼氏のそれである。

それにしても、雫が一番欲しかった「かわいいね」を意図せずくれてやるもこっちが強過ぎる。「かわいいね」なんていうセリフは今まで胸焼けがする程言われてきたであろう雫が吃って目も合わせられなくなるんやから。

 


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指先に力は入ってるけど、完全に閉口してた前のコマより表情が緩んでる。あざと過ぎて逆に笑えてきたのか、それとも雫の純粋な好意がちょっと嬉しかったりしたのか。今回は雫がもこっちにイカレる回ではあるが、同時にもこっちの雫に対する好感度が上がった回でもあると思う。雫がクラスマッチで余り者になったこと、卓球の練習という一見無意味な斜め上の努力をしようとしたこと、努力が空回りして結局一人ぼっちになったこと。どこを拾ってもシンパシーを感じないわけがない。雫はもこっちにとって「ほっとけない子」となった。そのことは翌日以降の行動にも表れている。

 


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元来もこっちは面倒見が悪い方ではないが、今回は特に色々よくしてあげてる。楽したいからという理由で卓球を選んだのに、しどろもどろになりながらゆりを振り切ってまで練習に付き合うことが、見返りのない人助けでなくて何なのか。喪132でも「こいつを助けるメリットもない」と独白してるし、「ドエロ話聞けそう」という下心も未だ発揮されてない。明らかに見返り以外の何かの為に雫を助けている。しかし、もこっちはその何かを今江先輩の行動と照らし合わせることをしない。「生徒会長(あのひと)」というやや他人行儀な呼称も、どこかしら今江先輩を「やさしいけど遠い人」(喪132)のままにしておきたい意識の表れに見える。ここでもこっちが深入りしないのは、それだけ大切な思い出だからというのがまず大きい理由だろうが、自分には喪147で見せたような葛藤が一枚噛んでるように思える。今江先輩と自分、自分と雫の間のつながりを理解した時、おそらくもこっちは完全に子供ではなくなる。自分の意思だけでなく、様々な人の思いが自分に役割を与え定義する世界。そこに踏み出したくないような、あるいはまだ踏み出す資格がないような、そういう不安を抱えてるのかも知れない。

話は変わるが、雫が稲中卓球部を返す時にどういう感想を述べたのかめちゃくちゃ気になる。というか、雫もそろそろもこっちが変な先輩であることに気づいてもよさそうなのに一向にその気配がない。これまでの経験から自分の方がおかしいのだと判断したのか、憧れのあまりそこに思い至れないのか。加藤さんに対するもこっちのガードの甘さもそういう所に起因してるのかも知れない。この2人を見てると、憧れからの軽蔑を瞬時に乗り越え全てを愛してしまったきーちゃんの進み具合がよくわかる。あれは鬼の子や。

 


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多くの人が悶絶したであろうこのコマの雫の左手が「この後どうする?」に対する回答のように見える。言葉は出ないが身体が「もう少しこのままでいたい」と告げている。ていうか、その口元に寄せた人差し指は何?何を意識しての行動なのか明らかにして欲しい。

ところで、今江先輩ならこの場面で抱き締めるという選択をするだろうか。しないような気がする。でも、もこっちがしてもらった一番嬉しかったことがこれなんやろな。そんな一番の思い出を惜しみなく後輩に分け与える姿は紛れもなく先輩そのものと思う。今はまだ模倣してる段階やけど、先輩は先輩、自分は自分という殻をいつか破ることが出来たら、その時はじめて今江先輩の心が理解るかも知れない。

(追記:「頑張ったけど」「ダメだったね」っていう現状を再確認するだけのセリフがすごく「らしい」と思う。もこっちは元々心にもない励ましが得意なタイプじゃないし、ここで雫にかける言葉はかつての自分に対する語りかけとしての意味を帯びるので、尚更ポジティブなことを言いにくい。強いて言うなら「いい匂いするね」が一応褒めてることになるのか?でも、それ以上の肯定を身体で表現してるので何の問題もなかった。やっぱり今江メソッドは凄い。)

 

今回は特定人を指す「先輩」、単なる一般名詞としての「先輩」、それに役割の意味合いを足した「先輩」等、様々な「先輩」の使われ方がされてて先輩概念について改めて考えさせられましたね。今江先輩がかつては今江後輩だったという事実にも思いが馳せられます。

他にも弁当を持つもこっちのトンベリっぽさとか、雫が箸を動かすコマがほとんどない細かさとか、地味に練習の成果が出てるっぽいこととか、「もう一回」抱き締めるフラグが立ったこととか触れたいことは色々ありますが、とりあえずこの辺で。加藤さんがラストの一連の流れから何を感じ取り何を学び取ったのか、次回が楽しみで今から窒息しそうですね。(了)