ふり向けば加藤さん

わたモテ感想&考察

【感想】BOOK☆WALKER特別編

正直神に祈りたい気持ちなんですよ。盛り合わせじゃない単品のネモがこんだけ出て来ることってもうまず無いですからね。キャラの掘り下げ、本編に対するフォローも充実してるし、何よりおまけのネモ。こんな贅沢とどう向き合えというのか。これを見て堕落せずにいられる人間がいるのか。こんなもん到底一人で処理出来る量じゃないので、とりあえず落ち着くことからはじめてみようと思います。


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なるほど。まず背景の三色でネモの歴史を大まかに切り分ける扉絵がいい。「目を閉じてもまぶしい(過去の暗さを打ち消すぐらい)」「ちょっとドキドキしてる」っていう短い独白でネモの心境をまとめつつ、徐々にネモに接近するコマ運びも流石の導入の巧さ。背景の草花もいつもより気合入ってるように見える。特別編やからいつもより薄かったらどうしようっていう不安が3ページで消し飛んだわ。

ていうか、「よいしょ」って心の声で言うのか。どうも最近のネモは「おやつ」とか「変態じゃん」とか言葉の端々に幼女返りの傾向が見受けられる。日常アニメのキャラの影響とも捉えられるけど、何か危なっかしいな。

 


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ネモの嗜好のルーツ。「戦いとか恋愛」って括りから、中学どころか小学生時代に忘れ物を置いてきてる気配がする。何かを定義して分断することに対しての拒絶が相当根深い。

二人三脚で柿沼に気さくに話し掛けてたのも、単に外面をよくしてたってわけじゃなかったんやな。オタクとか性別とか関係ないっていう信念がこの頃からあったわけか。

ここでネモの望む世界が日常アニメの中にしかなかったことがわかったのは大きい。ニワカどころか人格形成にまで影響してたとは。

しかし、この時点では現実を演じ切る覚悟というか、未練が断ち切れてないように見える。大量のクッション類と三角座りの形も醜い現実からの逃避を感じさせる。

 



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「まぁそれなり」「どうだろうね」「ああーうん」みたいな発言しかしてなかったからな。確かに心を開いてないって誤解されるような態度ではある。悪口に愛想笑いしたり、「超エロかった」に対して「面白かった」って返したのもマズかったかも知らん。

でも、「ブリっ子」って言われて凄い悔しかったやろな。全然そんなつもりじゃなかったのに。

怒ったり泣いたりしてもいい場面やけど、逆に深く仮面を着け直したのは、負けたくなかったからなんやと思う。ここで争ったら自分の信念を曲げることになるから。

この後の展開でも、陰口叩いてた子から距離を置くようになってたし、私は誰とも戦わないっていう強い意志が感じられた。勉強してるコマでもアニメを正面から見ずに音だけ聞いてて、一旦理想から目を背けてるように見える。

ネモがオタ要素を切り捨てて自分のキャラを再定義しようとした理由が、たとえみんなで仲良く出来なくても争いだけは避けたいっていう妥協、諦観なんやとしたら凄い皮肉やな。

皮肉といえば、nemoはラテン語でnobodyの意味ってよく聞くけど、偶然にしてはかなり核心を突いたネーミングやと思う。実際ネモは何者にもなりたくなかったやろうし。

 


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喪122と同じ色付いた花弁が舞ってる。髪染める前の吉田さん(最初小宮山と見間違えた)、うっちー、宮崎さん、柿沼もいる。既出のキャラと演出が出てるだけで読者サービスのように感じるのが凄い。

うっちーは平然としてるけど、宮崎さんは緊張してる。ここからまたドラマが生まれたんやろな。ドラマは大体緊張から発生する。

前回の話になるけど、うっちーは3-5に侵入するまでは宮崎さん達と一緒にいたんやと思う。予鈴ギリギリに来たってことは、それ以外に単独行動出来る時間がなかったってことやから。だから、うっちーには宮崎さん達を蔑ろにする気はないと考えてる。いつまで今のままの関係を維持出来るかはわからんけど。宮崎さんも執着ヤバそうやからなあ。

 


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極太フォントとネモの顔が怖い。張り付いたような笑顔やのに死に物狂いさがビシビシ伝わってきて凍りつきそう。

ネモは見下すことも妬むこともしたくないんやろうけど、それでも脱オタを決断したのはよっぽどあの事件が堪えたんやろな。ドス黒い瘴気出てたし。たまたま茜達と出会えてほんまによかった。仮にキバ子のグループに入ってても「上手く演」ったんやろうけど、絶対辛かったと思うから。

 


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単にもう忘れるなよって意味のこのセリフが何故か「待ってる」って風に聞こえた。この時のネモがそんなこと思うわけないんやけど。

でも、このコマって現在と強くリンクしてるっていうか、目覚める直前なこともあって時空を越えてる感があるねんなあ。現在のネモが当時のもこっちに語りかけてるみたいな。「ようやく会えた」っていう遠足でのセリフともつながってるし、現在過去未来の全てのネモがこのコマを特異点として多重投影されてるように見える。

 


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この誰にも見られてない状態での幼い顔がネモの素なんやろな。この顔をもこっちに見せる頃には完全にキャラ崩壊してそうやけど。異性恋愛を忌避し続けた分、一番アカン爆発の仕方をするかも知らん。最早おねロリの域に達してる。

ネモはもっとあっさりしたキャラと思ってたけど、子供時代の思い出をもこっちに求めてる関係性がきーちゃん類似でめちゃくちゃ重い。いや、高3の今になって子供に戻ろうとしてる分、きーちゃんよりも危ういかも知らん。喩えるならもこっちはネモにとって魔法のステッキをくれる珍獣みたいなもんか。子供に戻ったネモを少しずつ大人にする保護者。

さっきネモの名前にちょっと触れたけど、こう見るとヒナって名前もなかなか示唆に富んでる。

(追記:このコマのネモの顔はおそらく意識して中学生の頃に寄せて描かれている。好きなものを好きと言うことは嫌いなものを嫌いと言うことより難しい。嫌いを否定されるより好きを否定される方がダメージが大きいからだ。ネモはここに至ってはじめて「あのアニメ嫌い」ではなく「このアニメ(今の生活)好き」という確固たる意思表明が出来るようになった。これこそがネモが本当に言いたかったことなのだと思う。それをとうとう言えた嬉しさ、それが絶対に否定されることがないという安心感が顔に表れている。もしくは否定されても大丈夫な関係への満足か。いずれにせよ好きを言えなかった中学生のネモはこの瞬間成仏した。)

(追記:この直前に「田村さん吉田さんとも仲良くなったし」というセリフがあるが、正直「そうか?」と思ってしまった。ネモの憧れは「みんなで」ワイワイやることなので、多少こじつけてでもそういうことにしたかったのかも知れない。そして、その為には嫌がられても絡んでいくと。若干ごっこ遊びの感も否めないが。)

 


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指の形が凄いしツナミノユウ先生が描いたみたいな表情になってる。口は開いてるのに声が出せてないところがツボ。耐え切れない羞恥に一瞬で貫かれた衝撃の具合がよくわかる。

外部の刺激から仮面で保護し続けた分、ネモの素の心は子供のままっていうか、神経剥き出しみたいなことになってるんやな。それを自由に弄れるのがもこっちだけっていうのが物凄い背徳感や。やり返そうにも逆にもこっちはカサブタが甲羅みたいになっててダメージ通らんし。ネモに勝ち目が1ミリもなくて凄い。そのくせ、勝負とか言って自分からその急所をさらけ出すんやから子供の火遊びは怖い。何かこのタイミングで1つ前のコマがフラッシュバックしてきたな。きれいなピンク色か。ふーん。

ネモはそろそろもこっちと自分の戦闘力が柱の男と一般ドイツ兵ぐらい差があることを理解した方がいい。もこっちからしたら肩がぶつかったぐらいの事故で死にかけてるんやから。もこっちとの信頼関係が深まればこういうこともなくなりそうやけど、「罠」とか言ってる時点で先は長いな。

 

特別編を読んでから気持ち悪い妄想が無限に溢れ出て困ってます。取り返しのつかない感情が芽生える前に締めますけど、ネモを象徴するピンクって色が身体的な幼さにもかかってるってレベル高過ぎませんかね。しかも、それが1億人に知られてしまってるというね。私は強キャラのネモが好きだったんですけど、宗旨替えの圧力が凄いです。今回の話はほんまに恐ろしい踏み絵でした。やはり強キャラ需要は加藤さんに担ってもらうしかないんでしょうか。加藤さんなら致死量のセクハラにも幻魔相破で返しそうですし。ネモともこっちが血塗れで殴り合うのを見る夢はおそらく潰えましたが、私にはまだ加藤さんに全身の骨をバキバキにしてもらうという夢があるので何とか生きていけそうです。なお、次回から7ヶ月程不定期になります。舌の根も乾かん内に更新してるかも知れませんが。(了)