ふり向けば加藤さん

わたモテ感想&考察

【感想】喪151:モテないし勝利する

個人的に今回は児童文学風味を感じてめちゃくちゃよかったです。子供の頃のちょっとした非日常みたいなやつが好きなんで。なので多分に趣味的な解釈が入るかも知れませんが、よろしくお願いします。

 

 

内緒で
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マイペースなようでいて結構気にするタイプなゆり。次鋒戦が終わった時点で三点リーダーが出てるので、真面目にやろうとはしたっぽい。でも、勝てなかったしネモにも煽られた。そこで、卓球が出来る智子を頼るのは人選として妥当だし、自分が雫に劣後する者ではないことも証明出来て一石二鳥である。

ゆりにとって自分の悩みや特訓を一番知られたくないのがネモなので、「みんなには内緒で」の「みんな」の中にまずネモは入る。とすれば、加藤さんや茜辺りも入ってそうなわけで、ゆりにとっての「みんな」の範囲が広がってるようでちょっと嬉しい。

 

 

非日常へ
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看板が大写しで3コマ。無機質でだだっ広い(カメラを大きく引いている)無人の空間。それを見回す二人の視線。ナレーションみたいな枠で囲まれた店員の説明。見慣れない場所であることが強調され非日常感が漂う。2階スペースに到達した際のキラキラエフェクトからすると、彼女達からはこのスペースが何かしら「いいとこ」に見えているのだろうか。肖りたい10代の感性である。

完全に余談だが、力を合わせてカップルに対抗したり、けたたましい音とともに現実に引き戻される後の展開も含めて、今回の話はジュブナイル小説のノリで読んでた。そういう意味でもそこはかとなく異世界っぽさのあるこのコマが気に入っている。音漏れのシーンまでカップル以外の客が描かれてないのも良い。

 

 

当たり前
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今回の智子はやけに持論を多く展開するが、それに対するゆりの反応は沈黙か軽い反発(?)ばかりである。それにもかかわらず、智子は何度も同じような話を繰り返す。要するに、智子はゆりの返事を肯定的にも否定的にも捉えていない。言葉を重視していない。心底どっちでもいいのだ。そして、ゆりの方も何だかんだ素直に追従している。幼少期の黒木姉弟のそれに似た奇妙な関係性である。

喪102で描かれているように、智子は主導権を握った(と思っている)相手の意向をいちいち確認しない。自分にとって楽しいことは相手にとっても楽しいと決めつけている。主導権と言えば聞こえが悪いが、こういう態度は絶対に自分を嫌いにならないと信じ切ってる相手にしか取れないものであり、智子のゆりに対する信頼の厚さが伺える。もはや気を遣わないとかいう次元ではない。

(追記:公式ファンブックp7にて、智子が中学校の時に部活に入っていたことが明らかとなったが、それが卓球部である線は消えたと見ていい。「なんで卓球できるの?」という質問に対する答えの候補に挙がってすらいないからだ。所属期間や辞めた理由によっては、ここで思い出さなくても不自然ではないかも知れないが。他に智子が得意なものといえば長距離走だが、喪30、喪107で言及されていないので、陸上部でもなさそうである。)

 

 

ひとり
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喪147のラストとは変わって、半分影に引っ込む智子。智子にとって一人という状態は孤独であるが、同時に安息でもある(喪147)。そして、その明暗のバランスは、おそらくは通常人よりもかなり影の側に寄っている。ゆりもまた「無理して話さなくていいから楽」(喪112)と智子を評価する同類である。「二人」と「一人」のいいとこ取りが出来る特別な居心地のよさがこの1コマに集約されている。

ところで、今回ゆりは「私は〜だけど」というセリフを4回発している。その内の3回は智子の暴論に対するツッコミ(?)だが、「私はダーツもそれなりに楽しかったけど」というセリフだけ少し毛色が違う。他のセリフと違い、これだけは三点リーダーを挟んだ応答になっている。つまり、ゆりが反射的にではなく積極的に伝えたかったことである可能性が高い。何故ゆりはダーツが楽しかったことを伝えたかったのか。単純に二人で出来るダーツも悪くないと思っただけかも知れないし、智子と初体験を共有したことを重く見たのかも知れない。

敢えて強引に深読みをするなら、「智子にも勝てたし」に着目したい。この「にも」が智子以外の人物を含むのなら、該当するのはカップルかネモぐらいしかいない。カップルを指すのだとしたら、先程の楽しんだ方が勝ちという智子ルールに遅れて呼応したことになり、共に楽しんだという認識が強調されて尊い。ネモを指すのだとしたら、この時点で既にゆりは「明日根元さんに自慢しよう」と考えてることになり、ゆりが可愛い。何気ないセリフだが、侮れない妄想の余地がある。

(追記:ゆりは「ダーツも」だらだらする時間も両方楽しんでいる。「それなりに」(一番ではない)が「ダーツ」にのみかかるとすれば、ゆりもまた智子と同じ気持ち(これが一番楽しいし落ちつく)を抱いていたと見る余地がある。というか、実際ゆりは大勢でアクティブに動くより、落ち着ける相手と静かに過ごす方を好むので結構あり得ると思う。しかし、ゆりの性格ではそれを素直に伝えられない。その結果、遠回しな表現になってしまったのではないか。そうだとすれば、次に挙げるコマの三点リーダーには「一緒だね」が補充され、個人的にはエモさ倍点である。)

 

 


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「根元さんとか加藤さん成瀬さんも呼んでいいけど」。どこまで本気で言ってるのか、凄いセリフが出てしまった。やや明るい表情で漫画をめくりながら、しかし、それとは裏腹に「……」が頭に置かれてる(一瞬考えてる)。次のコマでも視線は智子に向けてる。半分は気遣い、もう半分は覚悟と信頼の問い掛けといった所だろうか。

それに対して智子は、「ああー……」と生返事をする。考えたこともなかったみたいな反応である。その上で、大勢だと「一番楽しいし落ち着く」行為が出来ないとやんわり渋っている。これは今自分と二人でいることが、大勢の友達と来ることより楽しいという意味に捉えられる。そして、おそらくゆり自身も同じ気持ちなのだ。一体如何ばかりの感慨であろうか。

特筆すべきは、ゆりに驚いた様子が全くないことである。むしろ、「やっぱり」ってな顔をしている。結局の所、ゆりはわかった上で確認がしたかったのかも知れない。三点リーダーも相俟って、照らすような影が妙に印象に残る。

 

 

勝利
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改めて見て思ったが、額縁に飾っておきたい名言やな、これは。この際、ゆりはその日あった森羅万象全ての出来事を自由律俳句にして智子のLineに報告したらどうだろうか。「まっすぐな道があるよ 智子」とか「白いご飯が炊けたよ 智子」みたいに。自由律に季語の概念は無いけど、末尾は「智子」で統一して欲しい。

このセリフの何が素晴らしいって、勝ち負けを自分で決めてることもそうやけど、「楽しかった」っていう確かな実感を込めてること。従来の空虚なマウントでは何万回繰り返しても、そこに勝利(自分にとっての幸福)は無い。他人から見たら些細なことを素直に喜べてることにも成長を感じる。喪144では自分の矮小さを恥じるような素振りがあったし。

一方で、ネモからすると何もかもがわからない。まともに労おうとしたのに何故?ダーツ?何が?いつどこで?次コマのネモは口は笑ってるが眉は吊り上がり汗をかくというわけのわからん表情をしてる。おそらく内心も複雑を極めてる。それだけに「根元さんにはわからないでしょ?」と言わんばかりのゆりのドヤ顔が可笑しく意味不明でありながらも痛快である。ゆりを褒めちぎりたい、拍手を送りたいという欲求が留まる所を知らない。

(追記:ネモに煽られたのが悔しくて卓球の練習をしたことがバレると、煽り返されるのは必至である。ゆりが「やったよ」(近日中の出来事と推認される)ではなく「やったことあるよ」(いつの時点でも成立する表現)と言ったのは、それを避けるためと思われる。先にネモに「やったことある?」と振ったのも「やったことあるよ」の不自然さを打ち消す一工夫だろう。喪144を見るに、ゆりは行動を起こす前にかなりシュミレーションを重ねるタイプだが、今回も自分なりに言うべき内容を煮詰めて来たようだ。「田村さんおしかったねー」のコマの目つきからも「よし、言うぞ」という決意めいたものが感じられる。)

 

 

 

天変地異みたいなバランス調整が来ましたね。ゆりの強みが全部出てて凄まじいです。あの「くい」ってやつもゆり以外には出来ませんからね。加藤さんにやっても「何?」って聞き返されて結局言葉で応答する羽目になりますから。いや、むしろ「くい」をやる前に全部やってくれそうですね。No.1なんで。

本文で触れてませんが、「二人でやらかせば恥ずかしさも半分」の下りが感慨深いです。もう二度と一人で耐える必要がないと明言されたようなもんですから。あと、2日目の卓球でもこっちとゆりが二人で負けてるっていうのもヤバいです。そんなとこでも分かち合うな。

ともあれ、散々二人を光の側に引っ張ろうとしてきたネモもこのままでは終わらないでしょう。自由度の高いイベントなので、うっちーもほぼ出演が確定してると思ってます。もちろん雫も。未だこの球技大会のテーマの全体像は見えて来ませんが、あと1回か2回で大きく物語が進むような気がします。進まなかったとしても一向に構いませんが。(了)